2010/08/30

狭心症の新しい治療法

狭心症は、心臓に血液を供給する冠動脈が動脈硬化のために狭くなってしまい、心筋に十分な血液が送られなくなるため、発作的に胸痛や胸部圧迫感などの症状を起こします。
狭心症の治療には、薬物療法のほか、足の付け根などから細い管(カテーテル)を通して狭くなった冠動脈を広げる「カテーテル治療」や、太ももなどの血管を移植する「冠動脈バイパス手術」などがありますが、高齢者や糖尿病などの合併症を持っている人など、体への負担が大きく手術ができないケースもあります。

しかし、狭心症の新しい治療法として開発された衝撃波による治療では、全身麻酔による開胸手術が不要で治療の痛みも殆どありません。この衝撃波による狭心症の治療法は、東北大病院の下川宏明教授(循環器内科)が中心となり、スイスの医療機器メーカーと共同で開発されました。
衝撃波は、今までも尿路結石を砕く治療などに使われていましたが、血管の狭くなった部分に当てると、血管増殖因子の働きが高まり、周囲に細かい血管が形成され、心臓の血流が改善されることがわかり、2004年から2回にわたり臨床試験が行われて来ました。臨床試験の結果は、1年後に狭心症の自覚症状が改善し、発作時に使用するニトログリセリンの使用量も殆どの患者で不要になり、心筋の血流改善が確認されたそうです。

実際の衝撃波による狭心症の治療は、1回につき200発の衝撃波を3時間かけて照射し、それを1~2日おきに3回繰り返すというもので、患者は麻酔の必要もなく痛みもまったくないため、寝ていれば済みます。体に負担が殆どかからないため、この衝撃波による治療法は手術が困難な重症患者にも可能なほか、必要があれば何度でも行うことができます。
この3回分の治療費は、26万5500円かかりますが、厚生労働相が指定する「高度医療」に承認されたため、検査費や入院費には保険が適用されます。

2010/08/25

人食いバクテリア「ビブリオ・バルニフィカス」とは?

2010年8月24日、香港の女性(68)が、「人食いバクテリア」に感染し危篤状態に陥っているというニュースがありましたが、この女性は、自宅で魚を扱っている際に人差し指をけがし、そこから人食いバクテリアと言われる「ビブリオ・バルニフィカス」に感染したことがわかりました。

ビブリオ・バルニフィカスとは、食中毒菌である腸炎ビブリオの仲間で、主に夏場に生の魚介類を食べて感染するほか、傷口から感染することもあります。健康な人が感染しても、下痢や腹痛を起こす程度で、重症になることは殆どありませんが、ビブリオ・バルニフィカスは、感染した体内で筋組織などを破壊する毒素を放出するため、肝硬変などの疾患を持っている方は、数時間~数日後に手足の急激な壊死を起こし、発症した場合の死亡率は約7割と言われています。
日本でも2001年8月に静岡県の肝臓疾患のある男性(72)が「ビブリオ・バルニフィカス感染症」に感染し死亡しているほか、毎年何名かの感染者が出ているそうです。また、2003年4月17日に国立感染症研究所と全国6都県の地方衛生研究所が、市販の魚介類の一部を調査した結果、その16%がビブリオ・バルニフィカスに汚染されていたそうです。

ビブリオ・バルニフィカス感染症にかからないために次のような方は特に注意してください。
・肝硬変や肝臓がんなどの重大な肝臓疾患がある方
・重症の糖尿病などで免疫力が低下している方
・貧血治療のために鉄剤の内服、投与を受けている方
・喘息などの治療目的でステロイド薬剤を使用している方
・お酒を大量に飲む方

ビブリオ・バルニフィカス感染症を予防するために、ハイリスクの方は、刺身など魚介類の生食は避け、よく加熱することを心がけてください。また、手に傷があるときは生の魚介類の調理を避け、釣りや海水浴などでも海岸で素足になることは避けてください。

2010/08/17

肺の生活習慣病・COPD(慢性閉塞性肺疾患)

タバコをたくさん吸う方は、肺がんのリスクをかかえていますが、もうひとつ怖い病気があります。それは
慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)というもので、英語ではChronic Obstructive Pulmonary Diseaseと言い、これを略して「COPD」と呼んでいます。
COPDとは、タバコなどの有害な空気を吸い込むことにより、気道(気管支)や、酸素の交換を行う肺(肺胞)などに慢性的な炎症が生じ、咳や喀痰が出たり、息切れが生じたりする病気です。COPDは、長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから「肺の生活習慣病」とも呼ばれています。

COPDは、悪化してからでないと気づきにくいという特徴がありますが、タバコを長年吸っているシニアの方で、階段を上り下りする時や、坂道を上る時に息切れをするという方は要注意です。息切れを感じたときに、意識的に口をすぼめて呼吸する「口すぼめ呼吸」も判断のひとつの目安になります。また、風邪でもないのに咳や痰が長く続いたり、進行すると胸の前後の幅が増大し、上体がビヤ樽のような独特な形になることもあります。
COPDがさらに進行すると呼吸不全や心不全を起こすこともあり、酸素吸入が必要なほど重症化すると5年生存率は50%に満たないと言われます。

現在、日本では500万人以上のCOPD患者さんがいると推定されており、世界中でも増加の一途をたどっています。
COPDは、早期発見が大切ですが、何よりもこのような病気にかからないよう、禁煙することがそれ以上に大切です。

2010/08/13

高齢者のあせもと接触性皮膚炎

暑い日が続き、あせもに悩まされているシニアの方も多いようです。あせもは、汗を出す管(汗の吹き出し口)が、汗が一度に大量に出ることで、塞がれてしまうことが原因で起こります。高齢者の場合は、赤みがかった炎症を起こす「赤いあせも」が多いですが、あせもとばかり思っていたら実は「接触性皮膚炎」だったというケースも多いようです。

見た目には、あせもと同じような症状ですが、「接触性皮膚炎」の場合は、塩分やアンモニアなどの汗の残留物が皮膚を刺激して起こります。汗によるかぶれと言えますが、首筋や背中など汗を多くかく部分に、かなり広範囲に、また短時間に赤いブツブツができます。
このような汗による接触性皮膚炎は、乾燥や摩擦などで、皮膚が弱くなっている部分に起こりやすく、特に高齢者は注意が必要です。

この汗による接触性皮膚炎を防ぐには、高温多湿の環境を避け、なるべく汗をかかないようにすることが第一です。また、汗をかいたら早めにシャワーやお風呂で汗を洗い流すようにしましょう。ただし、石鹸で洗いすぎると皮膚を保護している脂分まで落としてしまい、かえって皮膚を弱めてしまうこともあるので注意してください。
汗による接触性皮膚炎は、皮膚科にて診察を受け、処方されたステロイド系の塗り薬などですぐに治りますが、繰り返さないようにすることが大切です。

2010/08/03

夏の暑さと高血圧

夏の暑さは、熱中症を引き起こす危険がありますが、そればかりではありません。血圧にも関係して来ますので、高血圧症のシニアの方は十分に注意してください。
暑いとたくさん汗をかき、体の水分が失われて行きます。そのまま水分を補給しないでいると、血液がドロドロ状態になり、血圧が上昇し、心筋梗塞を起こしやすくなるのです。
また、冷房のきいた場所から外に出る時なども注意が必要です。寒い冬の時期がそうであるように、夏もまた急激な気温の変化につれて、血圧も上下しやすくなるからです。急激な血圧の上昇によって、脳や心臓の血管が破れたり、血管が詰まったりと、重大な症状を引き起こします。
このようなことを防ぐためには、汗をたくさんかいたらこまめに水分を補給し、血液が濃くなるのを防ぐことです。熱中症予防には、水分の他に塩分も必要ですが、高血圧症の方は塩分の摂りすぎにも注意してください。また、冷房の温度はあまり下げすぎず、室内と外を行き来しても体が対応できるような温度差にしておきましょう。
猛暑の夏は、熱中症の予防とともに、血圧の上昇にも十分に注意しましょう。

  高血圧対策・原因と予防法

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