2010/09/04

抗生物質の効かない多剤耐性菌とは?

世界中で、抗生物質の効かない多剤耐性菌の感染による死亡例が確認され、大きな問題となっています。
私たちは、怪我をしたり何らかの病気にかかると、菌やウィルスから身を守るため、抗生物質のお世話になる場合が多くありますが、菌やウィルスも生き延びるため日々進化をとげています。抗生物質を何度も使っているうちに、抗生物質が効かない遺伝子を獲得したものが現れて来ます。そのような菌やウィルスを耐性菌と呼んでいますが、2つ以上の薬に耐性を持つものを多剤耐性菌と呼んでいます。
「多剤耐性菌」に変異した菌に感染すると、抗生物質は殆ど効かないため、菌は感染者の体の中で猛烈な勢いで増殖します。

日本国内で確認されている多剤耐性菌には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バイコマイシン耐性腸球菌(VRE)、O157、結核などがありますが、最近はアシネトバクター(MRAB)というものが問題になっています。アシネトバクター菌は2008年10月から2009年1月に福岡大病院で患者23人が感染し、4人が死亡しています。2010には船橋市立医療センター、愛知医科大病院でも感染者が出ています。また、帝京大病院では2009年8月~2010年9月1日に患者46人が感染し、この中でもとの病気の悪化を含め27人が死亡していますが、9人の死因になった可能性があるとしています。

多剤耐性アシネトバクター菌は、健康な人が感染しても免疫力で防御できるため、何の問題も起こりませんが、高齢者や入院中で体の抵抗力が落ちている方、治療薬として免疫抑制剤を服用している方は注意が必要です。特に抗生物質を多用する病院内では、院内感染を起こしやすく、感染した患者は、敗血症や肺炎、MRSA腸炎などの重い病気を引き起こし、生命に危険が及ぶこともあるからです。

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